南部酒造場 (花垣蔵元) 2泊3日 酒造り体験記 “前編” 2018年2月16日〜18日

皆様、日頃より蔵家をご愛顧いただきまして、誠にありがとうございます。和酒担当の塚本です。

昨年12月にワイン担当から和酒担当に担当変更となり、いくつかの蔵元様を訪問させていただく機会をいただきました。これからその体験記をこちらのブログの方でどんどん公開して参りたいと思いますので、よろしくお願い致しますm(_ _)m

担当が変わって最初の出張は、表題の通りいきなりの泊まり込みでの酒造り体験でした。受け入れていただいたのは、北陸の小京都、福井県大野市に蔵を構える南部酒造場様です。当店でも「花垣」の銘柄で長く皆様にご愛飲いただいている蔵元様です。大野市は地下水が豊富できれいなため、一般家庭のお水もほとんどが地下水を利用する日本でも大変恵まれた場所となっています。南部酒造場様も、日本名水百選に選ばれている御清水を使いお酒を造られています。滾々と湧き出るお水は山のだしとも言われています。

また大野市は米所としてもとても有名で五百万石をはじめ、とても質の良いお米が造られており、水・米と酒を造るのに最高の環境と言えます。

南部酒造場様は1733年に金物商として始まり、お酒造りも100年以上の歴史をもつ蔵元様です。蔵の前の七間通りでは400年以上も続く朝市が毎年、春分の日から大晦日まで続けられています。

造られるお酒は「五百万石」をはじめ「越の雫」「九頭竜」「亀の尾」と様々なお米から造られ、毎月のように季節にあったお酒で私たちを楽しませてくれます。旨味あふれる食中酒タイプのお酒が多く、冷やから燗まで様々な飲み方が出来るお酒が多いです。

蔵での仕事を体験するまでは、その種類の多さから大きな蔵元様をイメージしていましたが、日置杜氏をリーダーに、酒造りに関わっておられるのは今年はわずか6人と少数精鋭でつくられています。

少人数で多数のラインナップを造られているので、しっかりとしたスケジューリングと蔵人のチームワークの良さを感じた蔵元様でした。これは蔵家でも是非取り入れなければいけないところですね!!

前置きが長くなりましたが、ここからは蔵の様子を写真を交えながらお伝え致します。

 

1日目:2月16日(金)

まだ皆様も記憶に新しいかと思いますが、今年の福井は記録的な豪雪に見舞われ、私が旅立つ2日前までは蔵元様までの陸路が開通しておらず、蔵元様を訪問できるかもわからない状態でした。当日も福井駅からは電車が動かず、バスで蔵元様まで向かいました。福井市内から大野市内に行くに従い雪深くなり、川崎・町田で育った私は驚かされるばかりの光景です。

蔵元様に到着しても、路肩にはまたもうずたかく積まれた雪が・・・豪雪に慣れている大野市の方もさすがに大変とおっしゃっていたのが印象的でした。

蔵に着くと、南部酒造場代表取締役・現蔵元の南部隆保氏(9代目)より、蔵の歴史や酒造りで学ぶこと等をご教授いただきました。建物は歴史を感じる造りでしたが、とても清潔に保たれておりました(ここも当店が負けていられないところです!!)

ご説明のなかで「南部酒造場の酒造り体験は日本で一番きついと思っているので、頑張ってください」とおっしゃられ、少しだけ頭の中にあった旅行気分が完全に吹っ飛びました。また蔵元様が「お酒造でどのような事をしているのかを、感じ取ってほしい。」というお言葉もいただきました。ここで感じ取った事は後ほど記します!!

その後、醸造に直接関わる日置杜氏をはじめとするスタッフの方々とご挨拶をし、早速お酒造りのお手伝い(お邪魔?)のはじまりです。

まずは、洗米・浸漬のお手伝いをさせていただきました。洗米は文字通りお米を洗う作業。浸漬はお米に必要な水分を吸わせる作業ですが、お米の質やその日の気温等に合わせて秒単位で調整します。時間管理は写真の壁にあるストップウォッチで行うのですが、小型の洗米機で米を洗う→洗い終わったお米を水につける→またお米を洗う・・・この作業を2人一組でワンセットで行います。「何秒になったら洗米機の流水バルブを開く!!5秒後にお米を投入!!出てきたお米を何秒になったら水につける!!何秒になったら次の米の準備!!」と最初にお手本を見せていただくのですが、いざやってみると作業順がアベコベになってしまったりと頭がいっぱいになってしまいました。なんとか最後の方は次の作業を予想しながら時計とにらめっこ出来るようにはなりましたが・・・15キロ単位のこの作業を300キロ近く行う事もあるそうです!!

この後は櫂入れの作業です。発酵中の醪(もろみ)の発酵のバランスを取るために写真の様な棒でタンクの中をかき混ぜるのです。「なんか酒造りっぽい」なんて甘い気持ちで意気揚々と作業を始めた私でしたが、自分の背丈より高いタンクの中をかき混ぜるのは想像以上に重く難しい作業でした。私も酒屋なので、重いものを持つ動作には自信がありましたが、これは別物です。全身を使いタンクの底にたまった解けたお米を持ち上げるように混ぜます。しかも、うまく出来ているかもわからず、うっかりするとタンクに引き込まれてしまいそうな・・・さすがに2日目以降もこの作業はコツがつかめない作業でした(当たり前か・・・)

この後は吟醸蔵へ、純米吟醸酒以上のお酒になる醪たちから甘い香りがたちのぼります。醪の検温作業を行いました。3カ所に温度計を挿しいれてその平均を取る作業です。作業自体は難しいものではないですが、時間毎に測定された温度から醪の状態を把握しその後の作業を決めるための大事なチェックのため、蔵の方は真剣な目で用紙をチェックされておられました。

次はいよいよ麹室に移動です!!蔵の中は気温5度前後、両親が九州人のためか寒さに弱い私は(関係ないか・・・)嬉々として室に!!しかし、さすがにいきなり30度は暑いですね(笑)

麹室では、切り返しの作業のお手伝い。引き込み→床揉み後、麹菌の繁殖が進み温度があがり、内外の湿度・温度が不均一になるため、ほぐして混ぜる事で温度の均一化、酸素の供給を行う作業です。

初めて麹米を触り、ほぐす中でお米がつぶれないかと心配でしたが、蒸したお米は外側がぱりっとしており、なおかつ弾力がありなかなかつぶれないようになっていました!!教本等では読んでおりましたが、実際に触るとお米の強さに感動し、本当にお酒は生きているんだなぁと実感した瞬間です!!

1日目の主な作業はここでおしまいです。この後、蔵の方達とお食事となりました!!体を動かした後のご飯は格別です!!お米も酒もお水もすべてがおいしくあっという間に平らげてしまいました。

ここでは日置杜氏のご家族が!!酒造りの期間は中々ご自宅には戻れず、逆にご家族が蔵に来られる光景があるようです。お嬢さんもパパに会えて嬉しそう!!

私も2児の父ですので、家族との過ごし方を考える事が多いですが、忙しい時期も工夫次第でいくらでも家族の笑顔は作れるものだと思わされました。

食事の後は、蔵の方と別室でお話を伺いました。検温の担当の方はここからも2時間置きに検温です。

1日目から、蔵の方の大変なご苦労と情熱でおいしいお酒が出来ている事を改めて感じました。

また、蔵の方の仕事における所作の無駄のなさには驚かされました。冒頭でもお話しした蔵の清潔感は汚さない所作と、徹底した清掃にありました。僕もこの体験の後はだい周りの整頓に気を使うようになりました(嘘じゃないです・・・)

 

さて、2日目以降は次回(数日後)に記させていただきます!!

塚本は朝5時の集合に起きれたのでしょうか!?

乞うご期待(^0^)/

塚本

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